決議・声明

コロナ禍における苦境を打破するために最低賃金額の引上げ及び地域間の賃金格差是正、並びに中小企業の支援強化を同時に求める会長声明

 

1 厚生労働大臣は、近いうちに、中央最低賃金審議会に対し、2021年度地域別最低賃金額改定の目安についての諮問を行い、同審議会から、答申が行われる見込みである。

昨年の中央最低賃金審議会は、新型コロナウイルスの感染拡大により経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産、廃業に追い込まれる懸念が広がる中、最低賃金の引上げによる企業経営への影響を重視して引上げを抑制すべきという論調が多数を占め、2020年度の地域別最低賃金額の引上げ額について目安額の提示を見送った。これを受けて、沖縄地方最低賃金審議会も2円の引上げにとどまり、沖縄県における最低賃金額は、2020年10月3日以降792円となった。

2 時給792円という金額では、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約13万7000円、年収約164万円にしかならない。この収入では、労働者が賃金だけで自らの生活を維持し、将来のための貯蓄をしていくことは極めて困難であり、最低賃金法第1条が目的として掲げる「労働者の生活の安定」にはほど遠い。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、沖縄県内においても、非正規労働者を中心に解雇や雇い止めが相次ぎ、とりわけ低所得者や女性のひとり親世帯に深刻な影響を及ぼしている。このような情勢においてこそ、労働者の生活を守るために、最低賃金額の引上げを後退させてはならない。多くの非正規雇用労働者をはじめとする最低賃金付近の低賃金労働を強いられている労働者は、もともと日々生活するだけで精一杯で、緊急事態に対応するための十分な貯蓄をすることができていない。ここに根本的な問題があり、抜本的な生活費保障のためにも最低賃金の引上げは必要である。

また、近年、沖縄県において積極的に取り組んできている子どもの貧困についても、抜本的に解決するためには、子育て世代の所得の向上が不可欠であり、最低賃金額の引上げが直接的かつ効果的である。

さらに、フランス、ドイツ、イギリス等の多くの国において、コロナ禍で経済が停滞する状況下においても最低賃金の引上げを実現しており、経済停滞を言い訳に最低賃金引上げを抑制してはならない。

3 最低賃金の地域間格差が依然として大きく、ますます拡大していることも見過ごすことのできない重大な問題である。2020年の最低賃金は、最も高い東京都で時給1013円であるのに対し、沖縄県を含む最も低い7県は時給792円であり、221円もの開きがある。最低賃金の低い地方では経済が停滞し、地域間の格差がより一層、固定、拡大するものである。従って、格差是正のためにも、最低賃金の低い沖縄県における最低賃金の引上げが必要である。

また、地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の最低生計費について、最近の調査によれば、地方と都市部の間で、地域間格差がほとんど存在しないことが明らかになっている。一例をあげると、沖縄県労働組合総連合が実施した「最低生計費試算調査」によると、1人暮らしの若者(25歳)が、那覇市内で普通に暮らすために必要な生活費は、男性で月額24万6316円、女性で月額24万9272円であるところ、いずれも東京都北区とほぼ同じとの結果が出た。これは、地方では、都市部に比べて住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限されるため、通勤その他の社会生活を営むために自動車の保有を余儀なくされることが背景にある。このように、労働者の最低生計費に地域間格差がほとんど存在しない以上、最低賃金の地域間格差は早急に是正されるべきである。

4 他方、最低賃金の引上げによって経営に大きな影響を受ける中小企業に対しては、新型コロナウイルス感染拡大に備えた支援策が拡充されているところであるが、最低賃金の引上げが困難な中小企業のための社会保険料の減免や減税、補助金支給等、長期的継続的に中小企業支援策を強化すべきである。

5 当会は、これまで毎年、最低賃金を引き上げることを求める会長声明を発出し、繰り返し最低賃金の引上げを求めてきたところであるが、上記のような状況を踏まえ、中央最低賃金審議会に対して、最低賃金の引上げと地域間格差の是正を求めるとともに、沖縄地方最低賃金審議会に対し、最低賃金を引き上げる旨の答申をすることを求める。

 

2021年(令和3年)6月28日

沖縄弁護士会

会 長  畑   知  成

 

 

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