決議・声明

オンラインを活用した接見交通の実現を求める会長声明

 

2020(令和2)年7月に閣議決定された「IT新戦略」等において捜査・公判のデジタル化方策の検討を開始するとされたことを踏まえ、現在、法務省「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」(以下、「本検討会」という。)において刑事手続IT化の議論が進められている。そこで「捜査・公判における手続の非対面・遠隔化」という議題が掲げられ、その中で、「被疑者・被告人との接見交通」が論点項目となっている。

 

現在、日弁連では、逮捕段階における公的弁護制度の創設が議論されている。逮捕段階からの充実した弁護活動を可能にするためには、逮捕されて間もない時点における迅速な接見を可能にするため、オンラインを活用した接見交通を実現する必要性が高い。また、身体を拘束された被疑者・被告人が十分な防御準備を行うためにも、書類の授受を含む接見交通をオンライン化する必要がある。

特に、当会を置く沖縄県には、離島の宮古島警察署や八重山警察署、沖縄本島北部の名護警察署のように、弁護人が被疑者・被告人と接見交通するのに多大な時間を要する場所があることから、本検討会においてオンラインを活用した接見交通の必要性を十分に踏まえた上で継続的に議論がなされることについて、重大な関心を抱いている。

 

ところで、本検討会における議論の中で、オンラインを活用した接見交通については、設備や予算などの問題が指摘されているようである。しかし、新たな設備の整備等が必要なのは、令状手続のオンライン化をはじめとする刑事手続のIT化全般に妥当することである。遅滞なく通信し、協議するための十分な機会、時間及び設備が提供されなければならないことは、国連被拘禁者処遇最低基準規則にも定められているところであり、被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利を実現するための設備等も当然に国の責任において提供されなければならない。

 

刑事手続IT化の議論は、何よりも被疑者・被告人の人権保障を拡充するという観点で進められるべきである。当会は、オンラインを活用した接見交通の実現に向け、本検討会において更に具体的な議論が尽くされることを期待する。

 

    2021年(令和3年)12月23日

          沖縄弁護士会

            会長 畑 知成

 

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