PFOS等汚染水の排出に抗議する会長声明
1 2021年8月26日,在沖米海兵隊は普天間飛行場で保管していた有機フッ素化合物であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA,以下両者を総称して「PFOS等」という。)を含む処理水を下水道へ排出したと発表した。
2 嘉手納飛行場や普天間飛行場周辺の河川等からPFOS等が高濃度で検出されていた問題について,当会は,PFOS等が自然界でほぼ分解されず人体に蓄積していく特性を踏まえ,2019年7月24日付け会長声明を出した。この声明では,沖縄県民の健康・安全を守るため,PFOS等の汚染源及び原因特定のための米軍基地内への立入調査の必要性を指摘するとともに,調査の結果,汚染が米軍由来のものであることが確認された場合には在沖米軍に対してPFOS等の使用中止や土壌浄化作業などの汚染の除去・防止対策を求めることを要請し,また,調査結果や浄化計画等については随時公表することを求めるなどしていた。
さらに当会は,2020年5月22日会長声明において,普天間飛行場におけるPFOS漏出事故に抗議し,同様の対策を求めていたところでもある。
3 普天間飛行場のPFOS等を含む処理水の処理方法については,本年になって日米両政府による協議が開始され,在沖米海兵隊が求める汚水浄化後の下水道への排出について議論が進められていることが報道されていた。地元自治体は,汚水の排出について安全性への懸念から反対を表明しつつ,汚水浄化後の水のサンプリング調査を行うなどの対処を行っていた。
このように,在沖米軍のPFOS等の処理については,日本政府を通じて地元自治体の意向を踏まえた協議が進むことが期待されていたものである。
4 しかしながら,今般の処理水の排出処理は,地元自治体によるサンプリング調査に対する評価もなされておらず,日米両政府の協議が結論に至っていない中,地元自治体の反対を押し切り,日本政府の了承を得ることもなく,在沖米海兵隊によって一方的に強行されたものである。沖縄県の玉城知事は同日夜の会見において「激しい怒りを覚える」との意向を表明している。
今般の処理水の排出処理は,在沖米軍が,沖縄県民の健康・安全にかかわる問題について地元自治体はおろか,日本政府の関与すらも認めない姿勢を鮮明にしたものであり,極めて問題である。
また,かかる在沖米軍の姿勢の根本にある現在の地位協定の問題性も顕著である。日米地位協定や環境補足協定の改定により,在日米軍に由来する環境汚染に対する日本政府による法的規制や地方自治体の関与が及ぼしうるような仕組みを設けることが急務である。
5 以上のとおり,当会は,在沖米海兵隊が行ったPFOS等汚染水の排出に対して強く抗議し、直ちに排出を中止するよう求める。
2021年(令和3年)8月27日
沖縄弁護士会
会 長 畑 知 成