法律コラム

 

破産の前に事業譲渡 取引先と従業員を守る

2025年5月20日 沖縄タイムス くらし相談室【法律】 掲載

破産の前に事業譲渡 取引先と従業員を守る

 

 新型コロナウイルスの影響が落ち着いた現在でも、売り上げが戻らず、借金の返済が困難な状況に陥っている中小企業や個人事業主が多く、「いっそ破産して事業をたたもうか」と考える方も少なくないと思います。しかし、事業をたたむと、築いてきた技術や顧客、そして大切な従業員の雇用を失ってしまいます。そこで注目されているのが、「事業譲渡」を活用して事業を存続させる手法です。

 これは、事業を新たな会社(スポンサー)に引き継いで事業そのものは残しつつ、旧会社や事業主個人は私的整理や破産をすることで負債を清算する手法です。事業はスポンサーの下で継続されるため、取引先への影響を抑え、かつ、従業員の雇用も守ることができます。

 ただし,事業をただ同然の金額で譲渡したり,根拠なく譲渡代金を決めた場合などは,事業譲渡をした後になって借入先金融機関との間でもめる可能性が高いです。そのため,この手法を取るにあたっては、中小企業活性化協議会等を利用して事前に借入先金融機関等と協議し、その同意を得て行うことが望ましく,仮に金融機関の同意を得る時間的猶予がない場合にも,譲渡代金が適正であることを客観的に説明できることが必要です。

 このような手続きを取るには,私的整理や倒産手続きに精通した弁護士に相談しながら進めることが有益です。中小企業活性化協議会を利用する場合にも,事業譲渡と破産手続を併用する場合にも,弁護士の持つ専門的な知識が必要となる場面が多いでしょう。

 「債務の整理=事業の廃止」とは限りません。事業譲渡を組み合わせることで、「取引先や従業員を守る手段」としての活用が可能です。事業の継続に不安を感じている方は、弁護士にご相談ください。(沖縄弁護士会・大澤系太)

 

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