被害弁償の支援制度
Q.犯罪の被害に遭いましたが、加害者からの被害弁償が全くされません。何か支援の制度はないでしょうか。
A.犯罪の被害に遭うと、肉体的・精神的に被害を受けるだけでなく、経済的にも大きな負担を強いられます。例えば傷害事件の被害に遭った場合、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料などの損害が考えられます。また、犯罪被害に遭ったために被害者やその家族が転居せざるを得なくなり、引っ越し費用や新居に住むための費用が必要になる場合もあります。
犯罪被害者が負ったこれらの経済的な被害については、損害を発生させた加害者が支払いをすべきです。そのため訴訟を提起し、判決に基づいて加害者の財産へ強制執行することができます。しかし、加害者に十分な経済力がないことも多く、犯罪の被害に遭い、損害が発生したのに、被害弁償がまったくなされない事例も多く見られます。
この点、交通事故などの場合には、加害者本人に経済力がなくても、加害者または被害者が加入している任意保険を使って経済的な被害を回復できる事案があります。
また、殺人事件の遺族や重大な被害を受けた犯罪被害者に対して、社会の連帯共助の精神に基づき、国が犯罪被害者等給付金を支給する犯罪被害者給付制度があります。もっとも、この制度は経済的な被害を全て回復するには足りません。
このように、犯罪の被害に遭った被害者の経済的な被害負担を軽減する必要があるため、近年、全国各地で、犯罪被害者らに関連する条例の制定が進んでいます。条例の中で、遺族や被害者が犯罪により受けた被害に係る経済的負担の軽減を図るため、支援金の支給を定める自治体も増えています。
沖縄県内の自治体でも被害者の経済的な負担を軽減するような条例の制定が望まれます。
沖縄弁護士会
会員 小林 健一
※琉球新報2021年2月21日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。