法律コラム

 

どうして弁護するの?

Q.どうして、弁護士は、被疑者や被告人の弁護をするのですか。

 
A.被疑者や被告人が無実の人であれば、有罪とされることを防がなければなりません。冤罪を生まないために弁護をするということが一つの理由です。もっとも、罪を犯した人まで弁護することを疑問に思われる方もいるかもしれません。その理由は、刑事手続に伴う人権侵害から守るためです。
 
 刑事手続は、様々な人権の制約を伴います。逮捕や勾留は、強制的な身体拘束です。捜索や差押えなどの強制的な証拠収集も行われます。これらは、ともすれば過度な人権の制約を伴う危険性があります。また、刑事裁判で言い渡される刑罰は、国家が個人の生命、自由、財産を強制的に奪うものです。刑罰は行ってしまった犯罪行為に見合ったものでなければならないとされています。
 
 そこで、被疑者や被告人の人権制約を必要最小限にするため、刑事手続では、様々な権利が保障されています。しかし、刑事手続は複雑で、法律に精通していなければ被疑者や被告人が1人で自身の権利を守ることは非常に困難です。そのため、法律家である弁護士が被疑者や被告人の権利を実現し、法律に従った適正な手続を実現することで、被疑者や被告人の人権を擁護しているのです。
 
 それでも、罪を犯した人を弁護することに違和感を抱く方もいるかもしれません。しかし刑事手続に巻き込まれる可能性は誰にでもあります。交通事故は良い例です。誤って交通事故を引き起こし、加害者となってしまったとき、刑事事件で弁護を受けることができれば安心ではないでしょうか。被疑者や被告人の人権を守ることは、将来、刑事手続に巻き込まれるかもしれないあなたやあなたの大切な人の人権を守ることにもつながっているのです。

   
 
沖縄弁護士会
会員 狩野 雅史 
 
 
※琉球新報2020年11月16日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。
 
 
 

 

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