8月,那覇軍港の浦添西海岸への移設に関して,移設場所の配置案に沖縄県,那覇市,浦添市が合意したとの報道がありました。2018年に開通した浦添西海岸道路の前の海域が200ヘクタール近く埋め立てられる計画が検討されています。
西海岸道路から浜に下りると,広大な干潟や海草藻場が広がり,そこに多くの底生生物が暮らしています。海が深くなる手前の浅海域は沖縄でイノーと呼ばれ,人々に様々な恩恵をもたらす豊かな場所として大切にされてきました。そしてこのイノーを取り囲むようにサンゴ礁が広がっています。
この海域は,この場所にある亀の形をした石灰岩の大きな岩にちなんで「カーミージー」の海と呼ばれて市民に親しまれています。沖縄ではとくに本土復帰以降,経済発展と地域復興の名の下に,各地で広大な面積の埋め立てが相次ぎました。それでもこれまでこの海域は開発を免れてきていました。
全世界で失われつつある海の生態系や生物多様性を守ることは,法的な課題でもあります。生物多様性基本法に基づく国の生物多様性国家戦略,沖縄県の「沖縄21世紀ビジョン」や「生物多様性おきなわ戦略」,また国連の持続可能な開発目標(SDGs)などでも,海や沿岸域を守り,自然と共生する社会を作るという目標が掲げられています。
また,事業者が海を埋め立てる場合,公有水面埋立法や環境影響評価法,沖縄県環境影響評価条例などの規律を受ける場合があり,環境保全に配慮しなければ埋め立てはできないとされています。
しかし,実際には相次ぐ埋立てにより海や沿岸域の環境に大きな変化が起こっており,自然と共生する社会は,十分に実現されているとはいえません。
沖縄弁護士会では,2008年に環境宣言を採択し,公害被害の根絶や自然環境の保全に向けた取組み(シンポジウムの開催など)を行ってきました。これまで発表した声明や意見書などは沖縄弁護士会のホームページでもご覧いただくことができます。
沖縄の豊かな海を次の世代に引き継いでいくためにはどうしたらいいか,今後も県民の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
沖縄弁護士会
会員 喜多 自然
※沖縄タイムス2020年10月12日『くらし』面に掲載したものを一部修正しています。