法律コラム

 

給与ファクタリングに注意

Q.新型コロナウィルス感染症の感染拡大で収入が減少し,生活が苦しくなりました。先日,「給与債権買い取ります」,「即日現金化!」などと書かれた「給与ファクタリング」のチラシが入っていました。利用しても問題はないでしょうか。

 
A.給与ファクタリングは,ヤミ金による違法な貸し付けである可能性が極めて高く,絶対に利用してはいけません。
 
 「ファクタリング」とは,一般に,売掛債権を買い取り,買い取った債権の管理・回収を業者自ら行う金融業務をいいます。その法的性質は,債権の売買であり,貸金ではないので,貸金業の登録義務や,利息制限法の金利制限,出資法の金利上限超過の刑事罰の各規制を受けません。
 
 ところが,法律上給与は使用者が直接労働者に対し支払わなければならないため,「給与ファクタリング」では,業者は利用者に自ら支払いを求めることができません。業者は利用者に給与の受領を委託し、その支払いを求めるほかないので、法的性質は貸金です。
 
 
 そのため,貸金業の各規制を受けますが,「ファクタリング」と称することで,規制を受けないかのように偽装し,違法な高金利を取ることを狙っているにすぎません。金融庁もHPで注意喚起しており,東京地裁もこのような給与ファクタリングは貸金と同様である旨の裁判がでています。
 
 
 したがって,給与ファクタリングの利用はヤミ金の利用と変わらない大変危険な行為であり,生活をより困窮させるだけです。決して利用してはいけません。なお,違法な高金利による貸金については,その元本すら返済義務がない場合もありますが,給与ファクタリング業者との交渉は危険です。既に利用してしまった場合は,自分だけで対処しようとはせず,弁護士にご相談ください。 
 
 
沖縄弁護士会
会員 崎山 敬太郎
 
 
※琉球新報2020年7月24日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。

 

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