法律コラム

 

気温上昇目標なぜ必要?

2024年12月20日 琉球新報 法律何でも相談コラム 掲載

気温上昇目標なぜ必要?

 

Q 「気温上昇1.5度」の目標とは何ですか? なぜ必要なのですか?

 

A 気温上昇1.5度とは、産業革命前の地球全体の平均気温と比較した上昇気温を1.5度以内に抑えようという目標数値です。この目標は2015年の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定で合意されました。1.5度といっても想像しづらいですが、気温上昇を1.5度以内に抑えることで夏季に北極海が氷結しない可能性が1世紀に1回との予測になる(2度上昇では10年に1回以上)等、多くの気候変動の影響が回避可能と言われています。

 世界気象機関(WHO)は、今年11月、COP29に併せ発表した報告書で、今年1~9月の世界平均気温の上昇幅が1.54度を超え、今年の平均気温が観測史上最も高くなる見込みとの分析結果を発表しました。この状況の中、同月開催されたCOP29では、先進国が2035年までに、気候変動対策資金として年間3千億ドルを拠出するとの目標を採択しましたが、小島嶼国の代表や環境保護団体などから不十分な合意内容であるとの批判もあり、パリ協定の目標達成には程遠い合意内容と言わざるを得ません。

 気候変動は、温室効果ガス排出者がそのリスクを負う構造ではなく、主に発展途上国、小島嶼国住民、将来世代等といった気候変動の原因を作出していない者がリスクを負う構造であり、これらの者の人権が脅かされています。また、自然災害の発生等、気候変動はすでに人ごとではありません。気候変動に関する政府間パネル(ICPP)の評価報告書によれば、人間活動により気候変動が生じていることは科学的にもはや疑う余地がありません。再生可能エネルギーへの転換等、抜本的な対策が急務です。

 

沖縄弁護士会

会員 新城 大成

 

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