法律コラム

 

少年法と適用年齢

Q.少年法の適用年齢の20歳未満から18歳未満への引き下げが検討されていると聞きました。少年法とはどのような法律ですか?引き下げに問題はあるのでしょうか?

 
A.少年法は犯罪を行った20歳に満たない者(少年)に対して、刑罰を与えるのではなく、保護・教育による少年の更生を図ることを目的とした法律です。
 
 成人の場合、刑事裁判において、犯罪の責任の大きさに応じて刑罰が決められますが、少年は少年審判により、少年自身の資質、少年を取り巻く親などの環境等を考慮して更生という観点から処分を決めます。社会内での更生が難しい場合に、少年院に送致されることもありますが、少年院でも指導、教育を通して少年を更生します。
 
 選挙権年齢が18歳に引き下げられたことを契機に、少年法の適用年齢も18歳未満に引き下げるという議論がされています。
 
 少年犯罪が増えている、少年の凶悪犯罪が増えていると言われますが、統計を見ると、少年の検挙総数は2003年以降減少しており、少年1000人あたりの検挙人数も同様に減少しています。殺人・傷害致死といった凶悪犯罪の割合も2006年以降ほぼ横ばいです。 
 
 少年法の適用年齢を引き下げた場合、保護・教育を目的とした手続きにより更生を図ることができた18歳と19歳の少年が刑罰の対象となりますが、明確な根拠はありません。喫煙や飲酒の制限は従来通りですし、目的の違う法律で適用年齢が異なることは当然です。  
 
 少年法第1条は、少年の健全な育成を期することを法律の目的としており、少年の更生・支援を考えれば適用年齢の引き下げには問題があり引き下げるべきではありません。   
 
  
  
沖縄弁護士会
会員 松本 啓太
 
 
※琉球新報2018年10月24日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。

 

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