法律コラム

 

市民運動にも適用恐れ

Q.「共謀罪」を盛り込んだ、組織犯罪処罰法の改正案が国会に提出され審議中です。この法案はどのようなものでしょうか。

 

A.共謀罪は、2人以上が犯罪の実行を合意することを処罰するものです。共謀罪法案は過去3回国会に提出されていますが、いずれも廃案となっています。
今回の法案は過去の共謀罪法案と比較し、①適用対象が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」とされたこと、②計画に基づく「準備行為」を行った場合に処罰するとされたこと、③これまでは対象犯罪が長期4年以上の刑を定める676の犯罪であったのものが277の犯罪とされたこと-などが異なっているとされます。

 しかし、①適用対象が「組織的犯罪集団」とは何なのか曖昧です。例えば、基地建設や原発再稼働に反対する市民団体が適法な表現活動を行っていても、警察に、「あの団体は組織的犯罪集団である」と認定されれば、捜査を受けるおそれがあります。そうすると、市民団体などが、安心して表現活動をすることができなくなってしまいます。また、②何をしたら「準備行為」にあたるのか、これも明確ではありません。どのような場合に本法案が適用されるのか、事前に予測はできないのです。さらに、③対象犯罪が277に減ってもテロと無縁の犯罪が依然として対象となっているのですから、テロに無関係の市民が処罰される危険性が高いといえます。

 そもそも、日本では銃器や爆発物について厳しい規制がされており、テロ対策として共謀罪を新設する必要は全くありません。

 このことから、日本弁護士連合会や沖縄弁護士会では、共謀罪に反対しています。詳しくは、日本弁護士連合会や沖縄弁護士会のホームページをご覧ください。

 

沖縄弁護士会
会員 高塚 千恵子 
※琉球新報2017年5月17日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。

 

前のページへ戻る