法律コラム

 

危険な共謀罪法案

Q.共謀罪とは何でしょうか。この秋の臨時国会で審議されるのではないかと言われている共謀罪法案は何が問題なのでしょうか。


A.共謀罪とは、2人以上の人が犯罪の実行を合意する罪です。合意するだけで処罰されてしまう点に特徴があります。
  

  現行法にも、合意だけで処罰される犯罪はあるのですが、内乱の陰謀罪・私戦陰謀罪など極めて例外的な場合に限られ、その数は15です。
 

  ところが、現在、政府で検討されているのは、「長期4年以上の刑を定める犯罪」について共謀罪を新設するというもので、処罰範囲が大幅に拡大することとなり、万引きといった窃盗罪も共謀罪の対象となります。
 

  問題は、どの程度の話し合いで共謀罪になるのかが不明確な点にあります。窃盗罪に関する分かりやすい例をあげれば、店主が居眠りをしているのを見て、今なら盗れそうじゃない?という友人の冗談に、そうだねと相づちを打ったことが共謀罪と言われたらどうでしょう。このように、日常生活の中で軽い気持ちで話したことが、突然、犯罪と言われかねない危険があります。万一、日常会話まで捜査されたり監視されたりすれば、大変住みにくい世の中になってしまいます。あるいは、テロ対策のために共謀罪が必要という意見があるかもしれません。しかし、現行法でも、一定の重大犯罪は犯罪実行の前に処罰されますし、そもそも日本では銃器や爆発物の所持などが厳しく規制されています。共謀罪法案はテロと無関係な犯罪にまで処罰が及ぶものであり、市民の自由な生活を大きく脅かす恐れがあるのです。
 

沖縄弁護士会
会員 高塚 千恵子
 
※琉球新報2016年8月16日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。

 

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