法律コラム

 

国防軍 武力行使拡大に道

Q.近ごろ、尖閣諸島をめぐる日中関係の緊張の高まりや北朝鮮ミサイル発射問題などの日本の安全を脅かしかねない事態が発生しており、憲法を改正し、自衛隊に代わる「国防軍」を持つべきとの主張があります。国防軍の創設は、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。


A .現在の憲法は過去の苦い戦争を二度と繰り返さないようにとつくられたものです。憲法9条は「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」の3本柱を規定し、前文の平和主義を徹底しています。
 

 これに対し、自民党提言の憲法改正案には、3本柱のうち「戦争の放棄」の記載はあるものの「戦力の不保持」と「交戦権の否認」は削除されています。現憲法では、個別的自衛権のみ行使可能とされていますが、自民党改正案では、個別的自衛権のほか、集団的自衛権の行使も可能となります。さらには、国連憲章上の武力制裁を超えた武力行使も可能となる余地もあります。
 

  改正案で自衛隊は「国防軍」という名で規定されています。改正理由では「自衛隊の名称を実態に合わせるものである」と説明されていますが、従来なかった交戦規定、軍事機密、軍事法廷に関する規定が盛り込まれており、現在の自衛隊の姿からは程遠いものになるとの指摘もあります。
 

  さらに、改正案における国防軍の役割には治安維持が含まれております。これが国策に反するデモ行進や集会の制約に利用される可能性も指摘されています。国防軍の創設は、私たち市民の生活にも影響を及ぼす可能性があります。
  

沖縄弁護士会
会員 高塚 千恵子
 
※琉球新報2013年7月23日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。

 

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