反撃能力、憲法上の問題は
2024年5月3日 琉球新報 法律何でも相談コラム 掲載
反撃能力、憲法上の問題は
Q 自衛隊の敵基地攻撃能力保有は、憲法上問題はないのでしょうか。
A 政府は、2022年12月16日、いわゆる安保3文書を閣議決定し、その中で、「相手の領域において有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力」である反撃能力(以下「敵基地攻撃能力」といいます)を新たに保有することを明記しました。
しかし、政府は従来、相手国に直接脅威を与えるような攻撃的兵器の保有は憲法上許されない、という解釈を繰り返し表明してきました。1999年8月3日の野呂田芳成防衛庁長官答弁では、敵基地攻撃能力を保有できるのは「国連の援助もなく、日米安保条約もない」というような場合の架空の話だ、としていました。
このような攻撃的兵器としての敵基地攻撃能力を保有することは、「必要最小限度の実力」を超える「戦力」を保持するものといえ、憲法9条2項に違反すると言わざるを得ません。
しかも、部分的な集団的自衛権の行使が可能となった現在の安保法制の下では、日本が攻撃されていないにもかかわらず敵基地攻撃が可能、ということにもなりかねませんし、真っ先に相手国の攻撃対象となるリスクを新たに背負うことにもなります。
また、敵基地攻撃能力の保有は、その保有に歯止めをかけようとしてきた従前の政府見解を大きく変更するものであるにもかかわらず、国会閉会後に閣議決定によって決定された、という手続にも問題があります。
沖縄弁護士会と日本弁護士連合会では、この問題についてさまざまな情報を発信していますので、当会のホームページなども参考にしてみてください。
沖縄弁護士会
会員 高木 吉朗