法律コラム

 

精神障がい者の強制入院 社会から隔絶 自由奪う
精神障がい者の強制入院 社会から隔絶 自由奪う

Q 2022年9月、国連が障害者権利条約を巡って日本に対し、精神科への強制入院廃止を含む政策改善を勧告したと聞きました。日本にどんな課題があるのでしょうか。


A 精神科病床の平均入院日数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の大半が40日以下という一方で、日本は270日以上と突出しています。21年の入院患者数約26万人のうち、6割以上が1年以上の長期入院でした。また、入院患者のうち約半数が医療保護入院とされ、本人の同意に基づかない入院、すなわち強制入院となっています。強制入院によって患者は社会から隔絶され、多くの方が恐怖心や屈辱感、自己喪失感にさいなまれ、移動の自由や自己の尊厳を奪われる事態となっています。


 こうした現状を踏まえ、国連は日本政府に対し①自由の剥奪を認めるすべての法的規定の廃止②精神病院に入院している障がい者全てのケースの見直し③無期限の入院の禁止④インフォームドコンセント(説明と同意)の確保⑤地域社会で必要な支援とともに自立した生活を育む-ことを要請しました


 日本弁護士連合会も強制入院廃止に向けた決議をしています。精神障がい者を強制的に入院させて治療するのではなく、差別偏見のない社会を実現しながら地域の中で安心して暮らせるように支援していく社会への転換が必要です。


 もし、意に反して入院させられ困っている人がいましたら、精神医療審査会というところに自分が受けている強制入院が適切なものかどうかの審査を請求することができます。沖縄弁護士会は、精神保健当番弁護制度を整備し、退院請求や処遇改善などの相談を受けています。無料で相談することもできますので、沖縄弁護士会にお問い合わせください。

             

沖縄弁護士会

会員 大久保秀俊

※沖縄タイムス2023年2月27日『くらし』面に掲載したものを一部修正しています。

 

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