生活保護と車の保有
生活保護と車の保有
Q.自動車があると生活保護は利用できませんか。
A.総じて公共交通機関が十分とはいえない沖縄では、自動車がなければ生活に支障の出る方が多いでしょう。生活保護行政は自動車の保有を原則認めませんでしたが、どんな場合も自動車を手放さなければ生活保護を利用できないわけではありません。資産とはいえない処分価値が低い自動車であれば、一定の使用制限はあるものの、保有が認められる場合があります。
生活保護の制度では、公共交通機関の利用が著しく困難な際の通勤・通院・通所・通学用自動車や、利用者が営む個人事業に必要な自動車の保有を一定の条件下で認めていますが、それは利用者の就労自立の可能性を奪ったり、地理的条件の悪い地域に住む利用者の生活維持及び自立助長のため必要不可欠な施設訪問の機会を過度に阻害してはいけないという観点などがあるためでしょう。
「公共交通機関の利用が著しく困難」とは、居住地か勤務先が公共交通機関利用困難地にあるか、もしくは利用者が深夜業務に従事している場合を指します。ただし、障害のある方にはこの要件は必要ないとされています。
また、子を持つ利用者が保育所などの送迎をしながら勤務する場合は、その利用者が公共交通機関利用での送迎・通勤が可能か否かという点や、公共交通機関で送迎可能な保育所などへ変更できるか否かという点などが個別に勘案され、自動車の保有が認められることがあります。
なお、生活保護の開始時に就労を中断している場合でも、就労により保護から脱却することが確実に見込まれる場合は、6ヶ月~1年程度自動車の処分を保留してもらうことができる場合があります。
生活保護の利用についてお悩みの方は、弁護士会までご相談ください。
沖縄弁護士会
会員 山田 英之
※琉球新報2023年5月11日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。