法律コラム

 

死刑制度の問題点 冤罪で執行される恐れ
死刑制度の問題点 冤罪で執行される恐れ

 Q 3月に沖縄弁護士会が「死刑廃止決議」をしたという記事を読みました。死刑制度の何が問題なのか、よく分からないので教えてください。


 A 死刑制度については、弁護士間でも賛否が分かれる難しい問題です。沖縄弁護士会はさまざまな立場から議論した末に、3月11日の総会で「死刑の代替刑を導入するとともに、犯罪被害者支援の抜本的拡充をした上で、死刑制度を廃止すべきである」旨の決議をしました。


 日本では、殺人事件の中でも特に凶悪な事件を起こした犯人に対し、死刑判決が宣告・執行されることは珍しくありません。しかし世界的に見ると、戦後わずかであった死刑廃止国は増え続け、2020年末現在では、法律上・事実上の死刑廃止国・地域は144なのに対し、死刑存置の国と地域は55に過ぎません。


 先進国で死刑制度が残っているのは日本と米国だけです。その米国でも、死刑廃止州が増加傾向にあり、約半数の州が死刑制度を廃止または停止しています。日本政府が国連から度々死刑制度について改善勧告を受けていることはあまり知られていません。


 世論調査によると、死刑がなくなると凶悪犯罪が増える、と考える人が多いようですが、死刑制度の犯罪抑止力は証明されていません。最も大きな問題は冤罪による死刑執行です。多数の報道からも明らかなように、冤罪をゼロにすることは不可能です。冤罪によって死刑判決を受けた方が死刑となる事態を避けるには、制度を廃止するしかありません。


 以上が死刑制度の問題点ですが、まだまだほかにも議論すべき論点があります。弁護士会ではこれまで、講演会などを開いて市民の皆さんが死刑制度の問題について考える機会を提供してきました。本年度も開催しますので、ぜひご参加ください。

             

沖縄弁護士会

会員 釜井 景介

※沖縄タイムス2022年7月18日『くらし』面に掲載したものを一部修正しています。

 

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