法律コラム

 

米軍による環境汚染

米軍による環境汚染

 
Q.県内の米軍基地周辺の河川や地下水に,有害な化学物質が流出していると聞きました。安全性に心配があるのですが,米軍の環境汚染についての法律の仕組みはどうなっているのでしょうか?
A.以前から,県内の米軍基地周辺の河川や地下水でPFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)と呼ばれる有機フッ素化合物が高濃度で検出されてきました。発がん性のおそれなどが指摘され,国際的にも原則として使用が禁止されている化学物質ですが,米軍基地内で泡消火剤として使用されています。PFOS等で汚染された河川を取水源とする北谷浄水場では,多額の費用をかけて活性炭を利用した除去を行っていますが,完全に除去できているわけではありません。
 
 昨年4月には普天間飛行場からPFOSなどを含む泡消火剤が大量に漏出する事故が発生し,今年8月には日米両政府の協議中にPFOSなどを含む処理水が下水道に排出されるという問題も発生しました。
 
 米軍の環境汚染は,市民の健康や安全に関わる人権問題です。しかし,日本政府や地元自治体が米軍の環境汚染に関与する仕組みは極めて不十分です。日本における米軍の地位を定めた日米地位協定などでは,汚染原因の特定のための立ち入り調査にも米軍の了解が必要な仕組みになっており,実際に昨年4月の事故が起きるまでは米軍の拒否により立入調査すらできませんでした。
 
 汚染物質の使用中止や土壌浄化などの汚染除去・防止対策など,米軍の環境汚染全般について日本政府による規制や地元自治体の関与が及ぶような仕組みが求められています。
 
 沖縄弁護士会では,この問題について会長声明を発表したり,日米地位協定の抜本的改定を求める決議を採択したりしていますので,詳しくは沖縄弁護士会のホームページをご覧ください。
   
 
沖縄弁護士会
会員 喜多 自然 
 
 
※琉球新報2021年10月25日『ひと・暮らし』面に掲載したものを一部修正しています。

 

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